ウォータールー大学の研究者らがEffort.jlを開発した。これは、科学者らがラップトップだけで宇宙の大規模構造をシミュレートできる新しいツールである。この革新により、スーパーコンピュータでの数日間の計算時間が数時間に短縮され、広大な宇宙データセットの高速分析が可能になる。ツールはEffective Field Theory of Large-Scale Structure (EFTofLSS)などの複雑なモデルをエミュレートする。
ウォータールー天体物理学センターのポスドク研究員であるMarco Bonici博士は、国際チームを率いてEffort.jlを作成した。これはEFfective Field theORy surrogateの略である。このツールは、Boniciの長時間のシミュレーションに対する苛立ちから生まれた。伝統的なモデルで単一のパラメータを調整するだけで、スーパーコンピュータで数日かかる場合があった。Effort.jlは、高度な数値手法とデータ前処理方法を使用して、この問題を解決し、例外的な速度で高い精度を提供する。
「Effort.jlを使用することで、EFTofLSSのようなモデルで複雑なデータセットを処理でき、以前は多くの時間とコンピュータパワーが必要でした」とBoniciは説明した。彼はDESIやEuclidのようなプロジェクトの関連性を強調した。これらのプロジェクトは膨大な天文データセットを生成する。エミュレータは研究者により高速で低コストのデータ分析を可能にし、データのニュアンスに基づく複数調整を可能にする。
エミュレータと呼ばれる計算ショートカットのクラスに属するEffort.jlは、リソース集約型のシミュレーションを再現しつつ、はるかに速く実行される。グラディエントベースのサンプリングなどの手法をサポートし、宇宙シナリオの効率的な探索を可能にする。検証では、予測がEFTofLSSの出力と密接に一致し、誤差のマージンが小さいことが示された。ツールは観測歪みも処理でき、容易にカスタマイズ可能である。
その強力さにもかかわらず、Effort.jlはパラメータ設定、結果解釈、物理的洞察の適用に人間の専門知識を必要とする。将来的には、より大規模なデータセットの処理や他のツールとの統合が可能で、天体物理学を超えた気象や気候モデリングなどの分野への応用が期待される。
この研究は論文「Effort.jl: a fast and differentiable emulator for the Effective Field Theory of the Large Scale Structure of the Universe」に詳述されており、Journal of Cosmology and Astroparticle Physics(2025; 2025 (09): 044, DOI: 10.1088/1475-7516/2025/09/044)に掲載された。著者にはMarco Bonici、Guido D'Amico、Julien Bel、Carmelita Carboneが含まれる。