ソフトパワーが日本外交の繁栄に不可欠

新しい首相の田中佐藤恵が外交デビューを果たし、日本はソフトパワーを活用して世界の中心舞台で繁栄する外交を目指す。著者の田中明彦氏は、軍事や経済のハードパワーだけでなく、知識と共感に基づくソフトパワーが重要だと主張する。このアプローチは、JICAの活動や文化輸出を通じて世界に貢献してきた日本の潜在力を最大限に引き出すものだ。

田中佐藤恵首相は最近就任したばかりだが、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連サミットで初の堅実な一歩を踏み出した。その後、ドナルド・トランプ米大統領との日米首脳会談で、故安倍晋三前首相とトランプ氏の良好な関係を引き継いだ。彼女の政策目標は「世界の中心舞台で繁栄する日本外交」であり、日本人と日本人の「潜在的な力と活力」を動員する必要がある。

世界では生の力(raw power)が支配的だ。例えば、ガザ地区ではハマスがイスラエルの攻撃で弱体化し、停戦を受け入れた。ハマスのイスラエルに対する奇襲攻撃で多くのイスラエル人が殺害され、人質が取られたことが紛争のきっかけだった。トランプ氏の関税は軍事力ではなく経済取引を通じた力の行使であり、中国も不都合な政策を持つ国に経済制裁を課す。ウクライナはロシアの侵攻に対し軍事的に自衛し、日本を含む各国が経済制裁で圧力をかけている。

不安定な安全保障環境では、防衛力強化と抑止姿勢が攻撃を防ぐ鍵だ。抑止とは、攻撃すれば損害が利益を上回ることを示すことである。田中首相の防衛強化指示はこれに沿う。しかし、安倍外交が高く評価されたのは生の力の行使ではない。力とは望む結果を達成する能力であり、脅迫に限らない。

各国は狭義の安全保障だけでなく、経済発展や国民の福祉、自然災害防止を求める。日本は公式開発援助(ODA)を通じ、発展途上国に円借款や無償資金協力で交通、水道、医療、教育などのインフラを支援し、多くの国々の経済・社会発展に寄与した。これにより日本企業も市場拡大の恩恵を得た。これは経済資源を建設的に用いたハードパワーだ。

ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授(今年初めに死去)が提唱したソフトパワーは、知識と共感を通じて行使される。知識ベースのパワーは説得力で、他者に現実を説明するものだ。安倍氏はトランプ氏に日米関係の重要性を説得した。日本はグローバルヘルス、プラスチック汚染、地雷禁止、重要データ、AI規制で調整役を期待されている。カイゼンなどの良い慣行共有も知識パワーの例だ。

共感ベースのパワーは、国際協力機構(JICA)のボランティア活動で育まれる。世界各地で日本人が現地コミュニティと協力し、スキルとノウハウを共有してきた。アニメや大谷翔平のようなアスリートの成功も親近感を生む。日本は金銭支援だけでなく、知識と共感のパワーで世界に必要とされている。地政学的対立が深まる中、日本は「潜在的な力」を正しく認識し、行使して繁栄する外交を実現すべきだ。

田中明彦氏は2022年4月からJICA理事長(2期目、初任は2012-2015年)。東京大学副学長(2009-2012年)、政策研究大学院大学学長(2017-2024年3月)を歴任。原稿は読売新聞11月2日号に掲載。

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