マックス・プランク協会フリッツ・ハーバー研究所を中心とする国際共同研究チームは、電子移動を介した崩壊(ETMD)が発生するまでの最大1ピコ秒間にわたる原子の動きを「ムービー」として再構築したと発表した。この研究により、原子核の運動や幾何学的配置が、崩壊のタイミングや生成物に大きな影響を与えることが明らかになった。
マックス・プランク協会フリッツ・ハーバー研究所および国際共同研究チームは、電子移動を介した崩壊(ETMD)として知られる放射線誘起プロセス直前の原子の動きを再構築した。実験には、ネオン原子1個が2個のクリプトン原子に弱く結合した単純なモデル系(NeKr2三量体)が用いられた。(sciencedaily.com)
ETMDでは、励起された原子が近くの隣接原子から電子を受け取ることでエネルギーを放出し、その放出されたエネルギーが別の近くの原子をイオン化して低エネルギー電子を生成する。研究チームは、軟X線を用いてネオンのコアをイオン化し、崩壊が発生するまでの最大1ピコ秒間(原子の時間スケールとしては異例の長さ)にわたるシステムの進化を追跡することで、そのダイナミクスを解明した。(sciencedaily.com)
これを行うため、研究者らはベルリンのBESSY IIシンクロトロンおよびハンブルクのPETRA IIIにあるCOLTRIMS反応顕微鏡を使用した。これらの測定結果と、何千もの原子核の軌道を追跡する「ab initio(第一原理)シミュレーション」を組み合わせることで、ETMD発生時の原子配置を再構築し、異なる経路に沿って崩壊確率がどのように変化するかを推定した。(sciencedaily.com)
再構築された「ムービー」から、原子は固定された単一の配置に留まるのではなく、三量体が絶えず形状を変えるような顕著な「徘徊運動(roaming-like motion)」を示すことが明らかになった。この動きが、ETMDプロセスのタイミングと結果の両方に影響を与えていたのである。(sciencedaily.com)
筆頭著者の一人であるFlorian Trinter氏は声明の中で、「崩壊が起こる前に原子がどのように動くかを文字通り目で見ることができます」と述べ、「この崩壊は単なる電子プロセスではなく、原子核の動きによって非常に直接的かつ直感的な方法で制御されています」と語った。(sciencedaily.com)
本研究では、タイミングによって支配的な幾何学的配置が異なることが報告されている。イオン化直後には基底状態に近い配置で崩壊が起こる。中間段階では、一方のクリプトン原子がネオンに近づき、もう一方が遠ざかることで、電子の供与と長距離エネルギー伝達に有利な構造をとる。そして時間が経過すると、原子は振り子のような徘徊運動と一致する、ほぼ直線状で大きく歪んだ配置をとる。著者らは、この形状の変化によって崩壊率が時間的に大きく変動し、構造によって1桁近く変化する可能性があると報告している。(phys.org)
シニア著者のTill Jahnke氏は、「原子は崩壊が実際に起こる前に、配置空間の広い領域を探索します。これは、原子核の運動が小さな補正要素ではなく、非局所的な電子崩壊の効率を根本的に制御していることを示しています」と述べた。(sciencedaily.com)
ETMDは、液体や生体物質における化学的損傷の原因となる低エネルギー電子を効率的に生成できるため、放射線化学において注目を集めている。研究者らは、ETMDがどのように構造や運動に依存しているかを明らかにすることは、水や生体分子環境における放射線影響のモデルを洗練させ、超高速X線実験の解釈を助けることにつながるとしている。(sciencedaily.com)
この研究結果は、『Journal of the American Chemical Society』誌に「Tracking the Complex Dynamics of Electron-Transfer-Mediated Decay in Real Space and Time」というタイトルで掲載された。(sciencedaily.com)