ニューヨーク大学ランゴンヘルス(NYU Langone Health)の研究チームは、タンパク質「HOXD13」がメラノーマ(悪性黒色腫)の腫瘍増殖を促進し、血管新生を促すと同時に免疫攻撃を阻害する主要な要因であることを突き止めました。実験においてHOXD13の機能を無効化したところ、腫瘍が縮小し、T細胞がより効果的に腫瘍内へ浸潤できるようになりました。この知見は、血管新生と免疫経路の両方を標的とする新たな併用療法の可能性を示唆しています。
ニューヨーク大学グロスマン医学部およびパールマターがんセンターのピエトロ・ベリコ博士とエバ・エルナンド=モンゲ博士らが率いる研究チームは、HOXD13が血管内皮増殖因子(VEGF)、セマフォリン3A(SEMA3A)、CD73といった血管新生経路を活性化させることを明らかにしました。これにより腫瘍への血液供給が促進されると同時にアデノシン濃度が上昇し、細胞傷害性T細胞ががん細胞へ侵入して攻撃することが妨げられます。HOXD13の発現量が高い患者では、血液中のT細胞数が少なく、免疫細胞の腫瘍内への浸潤も減少していることが確認されました。マウスおよびヒトのメラノーマ細胞株を用いた実験では、HOXD13の活性を抑制することで腫瘍が縮小し、T細胞が腫瘍へ再びアクセス可能になることが実証されました。米国、ブラジル、メキシコの200人以上のメラノーマ患者から得られた腫瘍サンプルを解析した本研究は、『Cancer Discovery』誌に掲載されています。共同研究者にはメキシコ国立自治大学およびブラジル国立がん研究所の研究者が名を連ねています。ベリコ博士は「今回の研究は、転写因子HOXD13がメラノーマ増殖の強力な促進因子であり、疾患と闘うために必要なT細胞の活性を抑制しているという新たな証拠を示すものです」と述べています。エルナンド=モンゲ博士は「これらのデータは、血管新生経路とアデノシン受容体経路を同時に標的とすることが、HOXD13を介したメラノーマに対する有望な新しい治療アプローチとなることを支持しています」と付け加えました。チームは今後、HOXD13の発現が高い患者を対象に、VEGF阻害剤やアデノシン受容体阻害剤を免疫療法と併用する試験を検討する予定です。同様の経路は、膠芽腫や肉腫といった他のがん種にも関与している可能性があります。