日本の#MeToo運動の象徴であるジャーナリスト、伊藤詩織氏のドキュメンタリー映画『ブラックボックス・ダイアリーズ』が、法的トラブルによる数ヶ月の遅れを経て、12月13日に東京でついに初公開された。この映画は、伊藤氏が2015年に受けた性的暴行事件の真相究明と司法の壁を描き、海外では2024年に公開されてアカデミー賞にノミネートされた。
伊藤詩織氏は2015年、TBSテレビのベテラン記者・山口敬之氏に性的暴行を受けたとして刑事告訴したが、警察の捜査開始に数週間を要し、検察は理由を告げずに不起訴とした。映画では、タクシー運転手が伊藤氏が駅下車を繰り返し求めたことや、ホテルの防犯カメラ映像で山口氏が伊藤氏を引きずる様子が証拠として登場し、捜査を促した。伊藤氏は上層部の介入を疑い、2017年に検察に苦情を申し立て、山口氏を相手に1100万円の損害賠償を求めて民事訴訟を起こした。
2022年の最高裁判決で、伊藤氏の主張が認められ、山口氏に330万円の支払いが命じられた。山口氏は性行為は合意の上だったと否定し、名誉毀損で1300万円の反訴を起こしたが棄却された。この事件は伊藤氏の2017年の著書『ブラックボックス』を基に映画化され、彼女は日本人初のドキュメンタリー部門アカデミー賞ノミネーターとなった。
日本での公開は、裁判用に密かに撮影した映像やインタビューの無断使用をめぐる法的争いが原因で遅れた。2024年、元弁護人の西弘子氏は、証人のプライバシーを侵害し将来の事件に悪影響を及ぼすと批判。伊藤氏は2月に一部の無断使用を認め謝罪し、ホテルのスタッフや警察捜査員の声を編集で変更した。10月にはタクシー運転手一家にも謝罪したが、事件の核心部分は残した。
12月13日、東京・品川のT・ジョイプリンスシネマで満席の初回上映が行われ、伊藤氏は「この映画は日本へのラブレター。ようやくこの日が来た」と安堵を語った。性的虐待サバイバーの観客、阿妻小雪氏は「伊藤さんの闘いに励まされた。社会に良い影響を与えると思う」と述べた。日本では性的被害者が沈黙を強いられる風潮が根強く、2023年の刑法改正で被害者保護が強化されたが、改革は遅れている。伊藤氏は「皆のブラックボックスを開くきっかけになれば」と願う。