ビール酵母を利用した新しい米栽培法が注目を集めている。この方法は水田の湛水を不要とし、労働力と水の使用を大幅に削減する。農林水産省はこれを一般的な手法とするための研究開発を開始する。
埼玉県春日部市で、ビール酵母を活用した革新的な米栽培法が紹介された。この方法は、従来の水田を耕起し水を張って苗を植える手法とは異なり、乾いた田んぼに直接種をまく。2025年には農業法人により36都道府県で導入された。
農業生産法人ヤマザキライス(埼玉県杉戸町)は、2024年から自社田んぼの10%でこの手法を採用。年間600トンの米を生産する同社の山崎吉雄社長(51)は、「苗から育てた米と同等の収穫だった」と語る。作業時間は70%削減され、コストも低減した。
この手法の鍵は、2015年にアサヒビール傘下のアサヒバイオサイクル社が開発したビール酵母含有資材。種子に散布すると、植物の免疫を高め、根を伸ばし水吸収を改善する。北海道網走市の福田農場F4は2020年から使用を開始し、2025年までに1.5ヘクタールに拡大。福田実代表(44)は、「水の大量供給が難しい田んぼでも米が育てられる革命的な方法だ」と評価する。
農林水産省は2024年に全国8つの農業法人でデモンストレーションを実施。一部で収量減少が見られたため、水量の最適化や雑草対策の研究を進める。茨城大学名誉教授の黒田久夫氏は、「水資源の有効活用と労働力削減につながるが、収穫米の品質低下事例もある。普及には政府の栽培ガイドラインが必要」と指摘する。この手法は農業の労働力不足解消に寄与する可能性が高い。