ソウルの東国大学の研究チームが、細胞内の遺伝子をオンにする磁気制御スイッチを開発したと学術誌「Cell」で発表した。この技術は特定の電磁信号を用いてマウスやヒトの細胞内の遺伝子を活性化するものだが、専門家からは結果の妥当性に疑問が呈されており、研究の欠陥も指摘されている。
東国大学のキム・ジョンピル教授率いる研究チームは、4キロヘルツ、2ミリテスラの電磁矩形波を60ヘルツで変調させることで、LGR4遺伝子のプロモーター配列を活性化するスイッチを開発したと報告した。この信号が、シトクロムb5タンパク質を組み込んだ細胞内でカルシウムイオンの振動を誘発し、遺伝子発現を引き起こす仕組みだ。学術誌「Cell」に掲載された論文(DOI: 10.1016/j.cell.2026.03.029)によれば、この手法は様々なヒト細胞やマウスで機能し、未処理の動物には検出可能な影響を与えなかった。キム氏は、正確な生物物理学的メカニズムについては調査中としつつも、体内の深部で治療用タンパク質の生成を制御するなど、将来的な医療応用に向けた信号の安全性は強調している。チームは現在、バイオテクノロジー企業や研究機関と協力しており、将来の出版物でデータセットを公開する予定だ。この手法は、光が生体組織を透過しにくいという光遺伝学の限界を克服するもので、治療や研究において非侵襲的に生物学的プロセスを制御できる可能性がある。物理学者のアンドリュー・ヨーク氏は、この主張を「荒唐無稽」かつ「画期的」と評し、3年間の査読期間中に独立した検証を行うべきだったと指摘した。同氏は、60ヘルツの信号から1分近い振動が生じることは物理的にあり得ず、カルシウム応答の大きさも特定の遺伝子のみに限定されている点が不自然だと疑問を呈している。これに対しキム氏は、振動周期を決定するのは信号の周波数ではなく細胞内の内部プロセスであり、応答も生理学的な範囲内に収まっていると反論した。さらに、活性化前に活動が示されているルミネッセンス図については、曲線平滑化による誤差であると説明し、図S5Pで画像が反転・複製されていた点については事務的なミスであり、現在「Cell」誌と修正手続き中であるとしている。出版社側からの回答はまだない。