脳卒中を発症した後、脳の損傷を受けていない側の領域が、失われた機能を補う過程で生物学的に若返って見える可能性があるという研究結果が発表された。研究チームはAIモデルを用い、世界中の脳卒中サバイバー500人以上のMRI画像を解析。この神経可塑性という現象が、脳卒中後の持続的な運動障害を理解する鍵になる可能性がある。
南カリフォルニア大学(USC)マーク&メアリー・スティーブンス神経画像情報学研究所の研究チームは、世界8カ国34施設にわたる500人以上の脳卒中サバイバーの脳画像を解析した。ENIGMA脳卒中回復ワーキンググループの一環として「The Lancet Digital Health」誌に掲載された本研究では、ディープラーニングを用いてMRIデータから脳の18領域の生物学的年齢を推定した。参加者の実年齢と、脳の画像から予測される年齢との差(brain-PAD)を比較することで、発症後の脳の健康状態の変化を評価した。その結果、大きな脳卒中ほど損傷側の脳半球では老化が加速する一方で、反対側の非損傷側では、特に運動の計画や注意に関わる前頭頭頂ネットワークにおいて、脳が若く見えるという逆説的な変化が明らかになった。USCケック医学部の研究神経学准教授であり、本研究の共同シニアオーサーを務めるホソン・キム氏は、「大きな脳卒中ほど損傷側の脳の老化は早まりますが、対照的に反対側の脳は若く見えるようになります」と述べた。同氏は、このパターンは脳が損傷した運動機能を補うためにネットワークを再編していることを反映しており、半年以上のリハビリを経ても重度の運動障害が残るサバイバーにおいて特に顕著に見られると付け加えた。スティーブンス研究所所長のアーサー・W・トーガ氏は、「世界中の何百人もの脳卒中サバイバーのデータを集約し、最先端のAIを適用することで、脳の再編に伴う微細なパターンを検出することが可能になりました」と指摘する。米国国立衛生研究所(NIH)の助成を受けた本研究は、こうした変化を長期的に追跡することで、個別化されたリハビリテーションの実現を目指している。