妊娠悪阻(にんしんおそ)を経験した1万人以上の遺伝子データを解析した結果、研究チームは同疾患に関連する6つの新たなゲノム領域を特定しました。これにより、既に知られていた複数の関連性が裏付けられたほか、食欲、インスリンシグナル伝達、脳機能に関与する生物学的経路が示唆されました。
多民族を対象とした大規模な遺伝学研究により、妊娠悪阻(HG)に関与する新たな遺伝的リスク領域が特定されました。妊娠悪阻は、妊娠中の激しい吐き気や嘔吐を伴い、脱水症状や入院に至ることもある疾患です。
本研究では、複数の民族グループから抽出されたHG症例10,974人と対照群461,461人を対象に、ゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施しました。この研究成果は「Nature Genetics」誌に掲載されました。
解析の結果、ゲノム全体で有意な関連が計10個特定されました。すでに報告されていた4つのリスク遺伝子(GDF15、IGFBP7、PGR、GFRAL)に加え、今回の研究ではさらに6つの遺伝子座(SLITRK1、SYN3、IGSF11、FSHB、TCF7L2、CDH9)が報告されました。これらのシグナルの一部は、食欲調節や代謝(インスリンシグナル伝達を含む)、および脳に関連するプロセスとの関わりを示唆しています。
また、本研究は、妊娠中に増加し、これまでの研究で吐き気や嘔吐のリスクと結び付けられてきた妊娠関連ホルモン「GDF15」の重要な役割を改めて裏付けるものとなりました。
これとは別に、ClinicalTrials.govに登録されている臨床試験では、以前にHGを経験し、妊娠を希望する人を対象に、妊娠前から「メトホルミン徐放錠」を服用することでHGのリスクや重症度を軽減できるかどうかを評価する計画が示されています。この試験の理論的根拠は、メトホルミンが血中のGDF15濃度を上昇させることで、妊娠中に急激に上昇する同ホルモンへの感受性を低下させる可能性があるという知見に基づいています。