「オゼンピック」や「ウゴービ」の有効成分であるセマグルチドが、HIVと共に生きる成人を対象としたランダム化プラセボ対照試験の事後分析において、DNAメチル化に基づく「エピジェネティック・クロック(生物学的年齢を測定する指標)」の進行抑制に関連していることが示された。科学者らは、これらの分子レベルの兆候が長期的な健康上の有益性につながるかどうかを確認するには、より大規模な研究が必要であると指摘している。
『Nature Communications』誌に掲載された研究報告によると、HIV関連脂肪過多症(腹部の過剰な脂肪を特徴とする疾患)を抱えるHIV患者において、セマグルチドがエピジェネティック・クロックと呼ばれるDNAメチル化に基づく生物学的老化指標の進行を遅らせることに関連していることが明らかになった。
研究チームは、HIV関連脂肪過多症の成人108人を対象に実施されたランダム化二重盲検プラセボ対照臨床試験のデータを分析した。被験者の約半数は週1回のセマグルチド注射を受け、残りはプラセボを投与された。チームは、DNAメチル化のパターンを用いて生物学的老化の側面を推定する「エピジェネティック・クロック」を評価した。
分析の結果、セマグルチドを投与されたグループは、炎症や臓器系の健康に関連する指標を含む複数のエピジェネティック・クロックにおいて、生物学的老化の進行が緩やかであることが示された。研究では、DunedinPACE(老化のペースを測定する指標)で9%の進行抑制が見られたほか、加齢に伴う疾患や全死亡リスクに関連するPCGrimAgeでも有意な減速が報告されている。本論文の筆頭著者は、カリフォルニア大学サンディエゴ校のMichael J. Corley氏である。
研究チームは、『npj Aging』誌に掲載された関連するパイロット研究にも言及している。これは、HIV患者で代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD、いわゆる脂肪肝)を抱える人々に対し、24週間にわたりセマグルチドを投与した調査である。この報告では、参加者の42%でDunedinPACEの減速が見られ、一部の参加者において他の加齢関連指標でも進行抑制の兆候が確認された。
科学者らは、これらの結果をもってセマグルチドが「抗老化薬」であると結論付けることはできないと注意を促している。Corley氏は、この結果はセマグルチドが老化に関連する一部の生物学的プロセスを遅らせる可能性を示唆しているが、結果の確認、変化の持続性の解明、そして分子レベルの老化マーカーが実際の臨床的転帰と一致するかどうかを判断するためには、より大規模かつ長期的な研究が必要であると強調した。