阪神・淡路大震災で父を失った神戸市在住の住友和子さん(69)は、10年以上にわたり、子どもたちに東日本大震災などの災害をテーマにした絵本を読み聞かせている。災害は他人事ではないと教えるのが目的だ。過去の地震の物語を通じて、自身の悲劇を共有し、備えの重要性を促している。
1995年1月17日の阪神・淡路大震災発生時、住友さんは夫と長女と暮らす家で激しい揺れを感じ、近くの実家へ駆けつけた。そこでは周囲の家屋がほとんど崩壊しており、1階で寝ていた父・佐藤完二さん(当時69)が瓦礫に埋もれていた。住友さんが到着した時には父の足の先しか見えず、遺体が引き出された際には血のうっ血で赤く変色していたと語る。この震災で住友さん自身も妊娠中だった胎児を流産した。
父は慎重な性格で、家族に地震の備えを繰り返し促し、缶詰やレトルトカレーなどの備蓄品を貯め込んでいた。住友さんは放課後児童クラブで働きながら、子どもたちに自身の体験や当時の神戸の様子を語り始めた。2011年の東日本大震災後、子どもたちの視点からメッセージを伝えるため、絵本の読み聞かせを本格化させた。
11月下旬、神戸市灘区の公園で約10人の子どもたちに、石川県輪島市の朝市をテーマにした絵本『あさ市』を読み聞かせた。地震後の大火災と復旧中の様子を説明すると、子どもたちは真剣な表情で耳を傾けた。他の絵本として、福島第一原発近くの牧場を舞台にした『希望の牧場』なども用いる。
阪神大震災から約31年が経過した今、能登半島地震などの最近の災害を題材にした本も取り入れ、若い世代に事件を身近に感じてもらう努力を続けている。絵本読み聞かせグループの一員として、地元の小学校を複数訪問している。
「住友さんの言葉で本を読んでもらうと、悲しい話でも穏やかで優しい気持ちになる」と、62歳の前由佳さんは語る。住友さんは「子どもたちが神戸、東北、能登の被災者が苦労したと感じ、私の話と絵本で自分を守れるようになるなら満足」と述べる。