岡山県瀬戸内市に、ハンセン病患者の隔離生活を体験できる新施設「伝承愛生館」がオープンした。日本初の国立ハンセン病療養所である長島愛生園の歴史を後世に伝えることを目的としている。住民の高齢化が進む中、体験型展示を通じて人権侵害の教訓を伝えようとしている。
瀬戸内海に浮かぶ長島愛生園は、1930年に開設された日本初の国立ハンセン病療養所だ。1940年代には約2000人が収容され、総計約7000人が入所したとされる。今年11月には開設95周年を迎えた。
新施設「伝承愛生館」は、療養所の歴史博物館(2003年開館)を補完する形で、住民の生活を体感的に再現する。住民の平均年齢は89歳を超え、67人のうち語り部は91歳の仲尾新一氏ただ一人となったため、こうした施設が必要となった。
入口の大パネルには瀬戸内海の写真が掲げられ、住民会長の仲尾氏は「美しいと思うまで長い時間がかかった」と語る。学芸員の田村智久氏は「一見美しい海だが、故郷への帰還を阻む大きな壁だった」と説明する。
施設内では、「始まりの部屋」で到着時の消毒や登録名付けを体験。ハイライトは「VRシアター:家族の物語」で、少年患者、家族、周囲の視点からアニメーションで差別と隔離を描く。
他の展示では住民のビデオ証言や感染症の歴史を紹介。田村氏は「COVID-19禍でも差別は繰り返された。ハンセン病を超えた偏見の社会構造を立体的に学んでほしい」と述べる。この施設は、家族が愛する子を療養所へ送らざるを得なかった過去の悲劇を伝え、社会の教訓とする。