佐賀県唐津市の呼子地区にある、水中レストラン「万帆」が、今年夏にも新船に置き換わって営業を続ける。1983年に開業した日本唯一の水中飲食店で、呼子イカを使った名物「イカシュウマイ」が人気だ。現社長の太田純子氏が語るように、顧客の愛情に支えられてきた施設が、地域のシンボルとしてさらに進化する。
佐賀県唐津市呼子地区の水中レストラン「万帆」は、呼子イカの名産地として知られ、1983年の開業以来、約40年以上にわたり営業を続けている。このレストランは、海中3メートルの深さに位置し、4つの大型窓からアジやチダイなどの魚が泳ぐ様子を間近に見ながら、海鮮料理を楽しめる点で人気を博している。
開業当初は、イカシュウマイやイカの刺身などの料理が客を呼び寄せ、賑わった。イカシュウマイは、ミンチ状にしたイカと魚を細かく刻んだ餃子の皮で包んだもので、大手ビール会社のテレビCMに登場したことで全国的に有名になった。
現社長の太田純子氏(46)は、27歳頃から家族経営に加わり、2021年に77歳で亡くなった父・義久氏から事業を引き継いだ。父は1980年に漁業と観光を結ぶ漁業観光のコンセプトとして水中レストランのアイデアを思いつき、建築と船舶の融合という前例のない施設のため、消防法の規定がなく、中央・県政府との交渉を重ねて開業を実現した。
太田氏は、陸上でのフグ養殖や宿泊事業など非効率な部分を整理し、事業を黒字化。2019年には九州旅客鉄道(JR九州)と提携し、JRグループの小売店などで商品を販売するなど事業を拡大した。現在、万帆株式会社はJR九州の子会社となっている。
老朽化した現構造物は今年5月頃に運用を停止し、長崎の造船所で建設中の新船に置き換わる予定だ。新船は柱に固定され、総床面積は約800平方メートルで現行と同規模だが、座席数は約190から若干減らし、スペースを広げる。主にテーブル席とし、高齢者向けの快適さを考慮。私室の一部を除く。水中階の窓は現行より大型化し、安全のためシャッターを設置。また、レストランと桟橋を繋ぐ400平方メートルの新魚類水槽を併設し、釣り体験を提供する。
「多くの顧客の愛情のおかげで続けられてきました」と太田氏は語る。新船は現位置に夏にも設置され、営業を再開。「新しいレストランでは、以前よりお客様を喜ばせる工夫をします。父から受け継いだ大切な施設なので、地域のシンボルとして、次の40~50年も愛されるように育てたい」と意気込みを述べた。
呼子イカは、九州北西部の玄界灘で捕獲され、呼子地区の漁港に水揚げされるもので、透明で厚みのある身と新鮮さが特徴。約50年前に地元魚介卸業者が活き造りを提供し始めたことで人気を博し、全国から観光客を呼び寄せている。