オークランド大学とブラジルのサンパウロ大学の研究チームは、延髄の外側傍顔面(pFL)領域にあるニューロンが、強力な呼気を促進する役割で知られているだけでなく、交感神経活動を増幅させ、神経原性高血圧の動物モデルにおいて血圧を上昇させることを報告した。Circulation Research誌に掲載された研究によると、これらのニューロンを抑制することで、高血圧ラットの血圧が正常値近くまで低下した。
オークランド大学マナーキ・マナワ心臓研究センターのジュリアン・パトン教授らを含む研究チームは、呼吸に関与する小さな脳幹領域が、動物モデルにおける高血圧の一因となっている可能性を示す証拠を報告した。
オークランド大学の発表によると、脳幹の外側傍顔面領域は、笑う、咳をする、運動する際など、肺の弾性収縮に頼るのではなく腹筋を使う「強制的な呼気」の際に動員される。パトン教授は、この領域がこうした強制的な呼気の際に「活動状態に入る」と述べている。
査読付き論文において、研究者らは延髄の外側傍顔面(pFL)領域のニューロンに着目し、血管の緊張を調節する交感神経経路にどのように影響するかを検証した。ラットを用いた実験で、光遺伝学的手法を用いてpFLニューロンを活性化させると、能動的な呼気が引き起こされ、呼気時の交感神経活動が亢進し、動脈圧が上昇した。また、同研究はpFLニューロンが延髄吻側外側野(RVLM)および橋のA5領域にある前交感神経ニューロンへ投射しており、高血圧モデル動物ではpFLからRVLMへの経路におけるシナプス伝達が強化されていることも報告した。
研究チームは神経原性高血圧のモデルとして、慢性間欠的低酸素状態にあるラットを用いた。その結果、化学遺伝学的手法によりpFLニューロンを抑制したところ、呼気に関連した交感神経の興奮が消失し、高血圧ラットの動脈圧が正常化したと報告した。
オークランド大学の発表ではさらに、pFL領域は脳の外側、具体的には頸動脈付近にある酸素感知構造である頸動脈小体からの信号によって駆動される可能性があると主張している。これに基づき、パトン教授は、脳内へ浸透させる必要のある薬物を避けつつ、転用薬を用いて頸動脈小体の活動を抑制することで、脳幹回路を「遠隔から」調節することを目指すと述べた。
また、今回の研究結果は睡眠時無呼吸症候群に伴う高血圧にも関連している可能性があると示唆されている。睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に呼吸が止まると頸動脈小体の活動が上昇する可能性があるためである。なお、研究者らは、本研究が動物を用いた実験であることを強調している。
本研究のタイトルは「Lateral Parafacial Neurons Evoked Expiratory Oscillations Driving Neurogenic Hypertension(外側傍顔面ニューロンが誘発する呼気振動が神経原性高血圧を駆動する)」で、2025年12月17日にオンライン公開され、Circulation Research誌の2026年1月16日号(vol. 138, no. 2)に掲載された(DOI: 10.1161/CIRCRESAHA.125.326674)。